千葉県の幕張メッセで、会場の案内をするコンパニオンに、客が尋ねた。
「ゴフはどこですか」
「はあ?」
この人、御不浄(ごふじょう)を略してゴフといったから通じない。そこで正しく、
「ゴフジョウどこですか?」
「ゴルフ場ですか? ゴルフ場はこちらには・・・」
そこで他のコンパニオンが助け船を出し、
「ああ、お手洗いのことでございますか、お手洗いは・・・」
便所、トイレの名称を、なるべく遠回しにいうという苦労は、今昔、洋の東西を問わない。外国に旅すると、習慣がわからないので苦労はもっと増える。クロレラ研究で知られる中村浩博士は、ある日、ドイツ人の若い男女と一緒にアウトバーンを走ったが、途中で小便がしたくなった。
ガソリンスタンドで用を足そうと思うが、スタンドもない。同乗の若い女性の手前、率直に「小便したい」ともいえないので、運転している青
年に遠回しにいった。
「ガソリンスタンドはまだか?」
運転手君は大きくうなずいて、
「ガソリンは十分あります」
ガックリ・・・やがて同乗の若い女性が、
「私、散歩がしたくなったわ」
高速道路で何が散歩だ・・・と中村博士、心中穏やかではない。が、これがトイレのサイン。アウトバーンでは、沿道の森陰に入って、用を足すのが当たり前だった。裸で生活している西アフリカのバングエ族も、
「トイレどこ?」
とはいわない。
「村長さんのお宅へ行く道はどこですか?」
これがトイレの場所を聞く言葉。
「私が追われたときの逃げ場所を教えてくれ」
ともいう。トイレに立つときは、
「罠を見回ってくる」
「薪を取りに走っていかなければならない」
ともいう。あるときバングエ族が、
「薪を取りに走っていかなければ・・・」
とエレガントに白人にいうと、
「薪は十分にある。行くことないよ」
そのバングエ族曰く、
「白人は野蛮だ」
トイレを遠回しにいうのは人類共通のエチケットなのかもしれない。
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